ジャワ寺院巡りとインドネシア美術の旅


今回は、ひたすら遺跡巡りの旅である。世界遺産のボロブドゥールやプランバナンをじっくり見るだけでなく、地球の歩き方にも載っていないジャワ島東部の遺跡群を見る、というツアー(バリ島経由だけど、リゾートのリの字もない)で、実は、前から狙っていた。だけど、数年前のバリ島テロ以来、治安の悪化でツアーがでなくなっていたのである。それが、去年当たりから、ようやく復活したと聞いたから、それじゃあ、今度のGW(インドネシアの乾季はGWくらいから始まる)にでも、と考えていたら、2004年末の大地震・大津波である。諦めようかとも思ったが、ジャワ島は地震の影響は全くないし、ジャカルタとかの大都市にはいかないからテロも平気でしょうというので、えいっと参加することに。

とはいえ、やっぱり大地震・大津波であれだけの被害を出した国に遊びに行っていいのか・・いやいや復興支援ツアーもあるし、とか、色々理論武装を考えながら成田に向かったのである。

しかし、成田発デンパサール行きのガルーダ航空はバリでリゾートを楽しむ人々で満席だったのであります。軽やかな軽装にお洒落をしている人たちばっかりで、遺跡めぐりのために小汚いなりをした我々は、なんか浮いているような居心地の悪さを感じながら11時発の飛行機でインドネシアに向かったのであります。

デンパサールに着くと、もう、いきなり赤道直下の暑さと湿気。うへえ、乾季でこれかい、と思いつつ、飛行機を乗り継いでジョグジャカルタへ。着いたのは日本時間で21時過ぎ、約10時間だね。こっちでは19時。稲妻が光っている。乾季の初めというよりは、雨季の終わりということなのか。明日の天気がいいといいなあ。

ジョグジャカルタはボロブドゥールとプランバナンという2つの世界遺産観光の拠点となる街なので、ホテルも近代的で設備がよく、かなり快適。ホテルがいいと、やっぱり楽。


観光1日目


今日は、プランバナンをじっくり見ることになっているのだが、せっかくジョグジャカルタに来ているのだから、少し市内観光もしましょうということで、王宮(クラトン)に立ち寄ることになった。ジョグジャカルタというのはジャワ島の「古都」なんである。どうせなら、少し街も楽しみたいよね。


       王宮(クラトン)

ということで、まずは王宮へ。
インドネシアは17世紀ころからオランダの植民地となっていたが、どうやらオランダは各地の王侯を利用しての支配をしていたらしく、この王宮は18世紀にオランダの影響を受けながら建築されたもの。

ジャワ独自の開放的な壁のない建物が並ぶ。
壁がないので、風が通って、これは涼しい。

実は、まだ9時前なのに、かなり暑くなってきてるんですよ。
でも、大きな屋根の開放的な建物の中に入ると、涼しいかも。
やっぱり、地元の人の知恵というのは大したものだね。

雨が降ったりすると、すだれのようなものを下ろすらしい。

ここは、いまではガムランの演奏や伝統舞踊の練習にも使われているらしい。
ちょうど、ガムランの練習をしてました。音が涼やか〜。




この王宮には、右の写真みたいに伝統衣装を着たおじさん達がいて、案内や管理・清掃をしている。

彼らは、実は王宮を守る人たちで、王侯への忠誠心からボランティアで、王宮を守っているんだそうな。
第二次世界大戦後、インドネシアが独立するまで統治していた王様に、未だに忠誠を尽くしているのである。凄いね。
ただ、最近の若い人たちは、この仕事をしたがらなくなっているんだそうな・・。

おじさんが後ろに差しているのが「クリス」というジャワの伝統的な短剣。
刃の部分が波型にうねっている曲剣なんだけど、さて、どう使うんだろう・・。

なんでも、このクリス、男性が武器として使っただけでなく、女性も護身用に小ぶりのクリスを持っていて、髪に差していたんだそうな。
それって、かっこいいと思いません?





プランバナン

王宮の観光を終えて、いよいよ、プランバナンへ。バスに乗って、プランバナンの説明を聞いていると、あっという間に着いてしまった。9時半に王宮を出て、10時にプランバナン史跡公園に到着。わずか30分じゃないか。


                                    チャンディ・ロロ・ジョグラン


世界遺産でもあるプランバナンは、プランバナンという村にある遺跡群。
8世紀から10世紀に築かれたヒンズー教寺院・仏教寺院が数多く残っている。

一番の見どころであるチャンディ・ロロ・ジョグランの周囲が史跡公園になっていて、中に入ると、いきなり日本語の案内板があるのにびっくり。
JA佐久浅間が寄贈したものらしい。

公園内を進むと、ロロ・ジョグランの偉容が迫ってくる。
うおお、すごい。



ロロ・ジョグランはヒンズー教寺院だ。シヴァ神を祀るシヴァ聖堂を中心に聖堂が立ち並んでいる。
東南アジア最大級のヒンズー教寺院ということだけど、すごいねえ。きれいだねえ。



近づけば、ほんと見上げるしかない。

中心のシヴァ聖堂の高さは47m。

現在は、シヴァ聖堂とその左右にブラフマ聖堂、ヴィシュヌ聖堂、つまりヒンズー教の三神の聖堂と、それぞれの神の乗り物であるナンディー(牡牛)、ハンサ(白鳥)、ガルーダを祀る祠堂が修復・再建されている。

それだけでも、十分、すごくて、見学には2時間くらいかかるんだけど、元々は、周囲に224もの小祠堂も建てられていたというのだから、とんでもなく、すごい規模の大寺院だったんだろう。

実際、周囲には小祠堂の跡というか・・・かっては祠堂の一部だった石がごろごろしている。
なんでも1006年の大噴火に始まった相次ぐ火山の噴火・大地震で、この寺院を始めとする多くの寺院が瓦礫の山になってしまっていたらしい。
今も凄いけど、再建・修復がもっと進んだら、もっと凄いよ、ここ。



ロロ・ジョグランというのは、「細身の乙女」という意味で、父王を殺した王に嫁ぐことを拒絶した美女が石にされたという伝説が残っており、シヴァ聖堂の中には、これが、その像です、というものも残っている。実際は、シヴァ神の妻であるドゥルガ像なんだけど。

ロロ・ジョグランでは、そういった神の像も面白いけれど、最大の見所は、回廊に残っているラーマ・ヤナのレリーフや寺院を飾る多くの神々のレリーフだと思う。

ラーマーヤナについては、現地ガイドさんが場面を説明してくれたんで、とっても面白かった。インドネシアのレリーフは、綺麗なだけでなく、表情が柔らかいし、ユーモラスもあるし、なんというか、伸びやかな美しさですね。

レリーフとして見るだけでも面白いけど、やはり内容・場面の説明を聞きながら見ると面白さが違う。

神々は、全て姿・表情が違う。
わたしのお気に入りは、左の人・・じゃない神様なんですけどね。この神様だけで何枚写真を撮ったでしょう。
他にも、たくさん素敵な神様がおります。
じっくり見て回って、自分のお気に入りの神様を探すのも楽しいかもしれない。



ロロ・ジョグランについては別に遺跡のレポートで詳しくまとめましたので、興味のある方は、どうぞ〜。    
                      プランバナン(ロロ・ジョグラン)のレポートを見る



しかし、それにしても暑い。
歩きながら、自分の汗がぶんぶん飛ぶのにはまいる・・。

もうちょっと、ゆっくりと見たかった気もするけど、もうちょっとゆっくりしてたら倒れたかもしれない。


こんなに暑いのに、史跡公園内では、いたるところで地元の人がお店を開いている。

もちろん、木陰で・・・ですが。

食べ物屋さんが多くて、あんまり「お土産屋」さんが出ていないのが、ちょっと意外。
他にも音楽を演奏している若者が多い。元気だ・・。

ひょっとして、地元の人にはどうってことない暑さなのかと不安になって現地ガイドさんに聞いてみたら、「今日はとっても暑いねえ」とのこと・・・よかった、地元の人にとっても暑いのか。

あ。でもさ、今日は涼しいなんていわれなくてよかったけどさ、地元の人でさえ、きつい暑さだっていうことは、日本から来たばかりの我々には、とんでもなくきつい暑さということじゃないの〜。

インドネシアの遺跡は緑に囲まれていて、それが素敵なんだけど、緑が豊かということは、それだけ湿気も多いということで・・・。
GWは、ちょうど雨季から乾季への移行期で、まだ湿気が多いらしい。
夏になると、もっと湿気はなくなるけど、もっと暑くなるんだそうで・・。

お次は、史跡公園内のチャンディ・セウに。
きしゃぽっぽの形のバスで移動します。ああ。風が気持ちいい。



                                  チャンディ・セウ

同じ史跡公園内にあるだけあって、チャンディ・セウには、あっという間についてしまった。

この寺院、入口に大きな守護神クベラが左右に鎮座していて、それがなんともいえず、ユーモラスなんだけど、寺院の中に進むと、ここもロロ・ジョグランと同じように噴火や地震で瓦礫の山になっていることがわかる。

中心となるお堂が修復・再建されているんだけど、周囲は崩れた無数の祠堂で囲まれていて、なんともいえない雰囲気。
なんせ、セウというのは「千」という意味で、日本語にすれば「千仏寺」とでもいう意味。
実際には、千ではなく240の祠堂があったということだけど、どちらにせよ、それだけの祠堂跡がごろごろしているというのは、なんとも凄い。

でも、こういう雰囲気、日本人好みかも。




地球の歩き方によるとヒンズー教寺院だけど、現地ガイドさんは仏教寺院と言っていました。中央のお堂の中には、かっては巨大な仏像がおさめられていたらしい。



史跡公園内には他にも寺院がいくつかあるのだけど、今度はバスでチャンディ・カラサンに移動。といっても、やっぱり、あっという間だけど。




  チャンディ・カラサン


チャンディ・カラサンは、大きな道から見えるところにある。

にわとりが駆け回る民家の中に、祠堂がぽつんと残っている。

ここは、漆喰が残っていて、鬼面カーラの装飾レリーフが有名なんだって。
確かに、きれいです。
でも、この写真じゃわかんないね・・・。

この寺院、仏教とヒンズー教の融合を示すものらしいけど、ここに限らず、プランバナンの寺院は、ヒンズー教寺院であっても仏教の影響が強いし、逆に仏教寺院でもヒンズー教の影響が強くなっている。

ちなみに、地球の歩き方では、この寺院もヒンズー教寺院となってますが、現地ガイドさんは仏教寺院と言ってました。
頂上はくずれているけど、たぶん、ストゥーパ(仏塔)の形をしていたんだろうとのこと。





それにしても、暑いよ。


ここで、やっとおひるごはん〜〜。

時間を見ると、1時半。ロロ・ジョグランに着いたのが10時だったから、約3時間半ほど、遺跡めぐりをしたことになりますね。

レストランには、クーラーはありませんでしたが(涙)、食事はおいしかった。

ここらへんの有名料理らしいんだけど、鳥を揚げたもの・・。
これって、きっと日本で食べたら、脂っこいと思うんだけど、暑さに疲れた体には、とってもおいしい。
スープはカレー味でしたね。これも、なんともいえず、おいしかったです。というか、インドネシアのスープって、この後で食べたどれも、おいしかったなあ。

後ろにあるのは、ビンタン・ビール。
インドネシアで、一番お世話になる飲み物。





  チャンディ・サンピ・サリ

食事の後、再び、遺跡巡り開始〜。

みんな、暑いのに元気だなあ。

チャンディ・サンピ・サリというのは、小さなヒンズー教寺院で、写真だと、ちょっと偉そうだけど、実はあんまり見どころはない。
きれいに修復されているんだけどね。

実は、ここ、地面から6mも低いところにあるんです。
そこが最大の見所。
火山の噴火に伴う火砕流だか土石流で埋もれてしまったらしい。

インドネシア、昔から、火山や地震に苦しめられてるんだね・・。


ここらへんで、正直、ちょっと疲れてきた。
なんせ、暑いし。
それに、最初に見たロロ・ジョグランが凄すぎて、正直、あとの遺跡はいまひとつ、と言えなくもない。

でも、実は、この後も凄かったんだよん。





                                       チャンディ・サリ

「サリ」というのは「美しい」という意味。

チャンディ・カラサンから比較的近いところにある(わたしはバスで移動したけど、たぶん、歩ける)。
おじさんがにわとりをさばいていたり、犬が駆け回っている集落の中を進むと、いきなり、この寺院が現れる。

遺跡の中でも、子供が駆け回ったりしていて、のどかなんですよ。
他の観光客は全くいなかったけど、う〜ん。名前に負けない美しさ。なんで、見に来ないのか。

写真だと判りにくくなっちゃうんだけど、実は、寺院の外壁に、びっしりと美しいレリーフが彫られてる。
楽器を持った天人とか、綺麗なキンナラ(半人半鳥)とかのレリーフが、ともかく、びっしり〜。
それでいて、うるさくなってないところが、センスの良さを感じさせますなあ。






      チャンディ・プラサオン
プランバナンで最後に訪れた寺院が、ここ、チャンディ・プラサオン。
史跡公園のちょっと北東にある。
チャンディ・セウから2キロくらいかなあ。田んぼの中に、建造物が二つ並んでるのが見えてきたら、それがこの遺跡。

ここは、凄かった。

もし、プランバナン遺跡群のうち2つだけ行くとしたら、ロロ・ジョグランはもちろん外せないけど、もう1つとして、私はここをお勧めします〜。

もちろん、好みはあると思うけど、この寺院は、まず、外壁のレリーフが素敵・・・でも、まあレリーフ自体はチャンディ・サリの方が見事かもしれないな。
しかし、この寺院、内部に見事な石仏があるんですよ。
それも、いくつも。
更に、外にも、基壇の上に、幾つも石仏が並べられた場所がある。
のどかさとあいまって、なんともいえない、素敵な雰囲気。



チャンディ・プラサオンに感激して、ロロ・ジョグランとは別にプランバナン遺跡群のレポート後編を作ってしまいましたので、石仏とかに興味のある方は、どうぞ〜。もちろん、プラサオン以外の遺跡もまとめてあります。
                         プランバナンのレポート後編に行く




                      ラトゥ・ボコ

ということで、プランバナンの遺跡群を廻り、本日最後の観光が、ラトゥ・ボコ、ボコの丘。

あのロロ・ジョグランの父王の宮殿跡と言われるものが残っているらしい。「丘」の上に。
で、プランバナン遺跡の見晴らしもいいらしい。

ちょっと嫌な予感がしたのだが・・・・やっぱり・・・駐車場からは階段が延々続いているのであった。
なんで、このツアーは、こんなに山登りが好きなんだろう・・・。

暑さに参った身には結構、辛いです。でも、まあ、展望カフェみたいなものがあって、そこからの眺めはなかなか。

でも、宮殿跡は、更に登らないといけません・・・しくしく。
まあ、途中、放牧されているやぎさんとか羊さんが出迎えてくれて、癒されるけどね。

で、宮殿跡として、どういうものが残っているかというと・・・
正直、あんまり面白いものはない。
あえて言えば、写真の沐浴場とかかなあ。
もう少し、修復・復元が進めば面白いものになるのかもしれないけど。
更に、宮殿跡より上に展望台があるので、体力のある人はぜひ、挑戦してください。






ラーマーヤナ・ショー


これで終わりと思いきや・・・

なんと、夕食には、ラーマ・ヤナ・ショーがついていたのであります。

いやあ、予想以上に面白かった。
ラーマーヤナの粗筋を知っていれば、十分、楽しめる。

それにしても演出が派手。
炎とか舞台の上で、ばんばん燃やしちゃうし。

ハヌマーン大活躍。小猿役の子供達もかわいかったなあ。




ということで、長い長い初日が終わったのである。
いいのか、初日から、こんなに遺跡尽くしで。
というか、フィルム持つか?初日でこんなに使って・・・

いやいや、それより明日からも、こんなに暑いのか?

興奮しつつも、不安も感じるわたしであった。

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