3日目・ヤズドへ


年が明けて2004年1月1日。とはいえ、イランのお正月は3月なので、特になにもない。
今日は、イスファハンから、ゾロアスター教の街ヤズドへの移動である。ガイドブックで調べたら、なんと300キロ以上。だけど、よく見たら、初日のテヘランからイスファハンは、なんと400キロ以上。うは。ほんじゃあ、まあ、初日の移動よりは楽ということで・・・。


イスファハンの街を出て、バスは走る。
途中、山から霧が降りてくる。

そして、気がつけば、いつのまにか周囲は砂漠というか土漠というか・・・。
なのに、遠くには雪を抱いた山々が見える。不思議な風景。


バスは、ひたすら走るのだ。

けれど、ヤズドの街は遠い。

地震の救援物資を運んでいるトラックなども見かける。なんか、申し訳ない。

途中で、キャラバンサライが見えてきてので、寄って見ると、なんとキャラバンサライの建物を利用して駱駝を飼っていた。

雪が見えたり、砂漠があったり、駱駝もいるし、なんか、よく分からない気候というか地形というか。

      ヤズド    

ヤズドに着いたのは、午後の2時を回ったころだった。イスファハンを出たのが朝の8時、途中、寄り道や昼食をとったとはいえ、結構、長い時間がかかったものだ。

ヤズドは地図で言うとイランの中央近くに位置する街である。周囲は砂漠で夏に訪れると、凄い暑さを体験できるらしい。ゾロアスター教の街として有名だけれど、ゾロアスター教徒は圧倒的少数派で、ほとんどはシーア派のイスラム教徒。とはいえ、アケメネス朝ペルシャ(BC550〜BC333 アレキサンダー大王に滅ぼされる)・ササン朝ペルシャ(AD226〜651 イスラム軍に滅ぼされる)の国教であったゾロアスター教が未だに生き残っているということ自体、驚異的という気がする。


   ゾロアスター教神殿

まずは、ゾロアスター教の神殿へ。
本山にあたる神殿ということだけど、新しい建物でちょっと拍子抜け。

でも、建物が新しいということは、今も、信者達が訪れる現役の神殿ということ。

入口にはタイルでゾロアスター教のアフラ・マズダの像が飾られている。

ゾロアスター教は、世界最古の宗教のひとつで、天国と地獄・最後の審判など、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教をはじめとする多くの宗教に大きな影響を与えた。


ゾロアスター教は、簡単に言えば、世界を善神アフラ・マズダと悪神アングラ・マイニュ(アーリマン)の戦いの場とする二元論の宗教。
人間は自分の意志で、善悪どちらに与することもできるが、死後の審判で、善が多ければ天国に悪が多ければ地獄に行く。
善神と悪神の戦いは最後の審判まで続くが、最後は善神アフラ・マズダが勝利する。

ゾロアスター教では、火・水・土は神聖なものとされ、この神殿でも聖なる火が、なんと1500年に渡って灯し続けられている。
右がその火。

ゾロアスター教が東方に伝えられたときに「拝火教」と訳されたのも、火を大事にしていたから。

なお、ゾロアスターのドイツ語読みがツアラトストラ。
ニーチェのツアラトストラかく語りき、更に、その影響を受けた交響詩が2001年宇宙の旅のテーマ曲・・・まあ、あまり関係ないですか。




                                    金曜モスク


お次は、ヤズドの街の金曜モスク。ゾロアスター教神殿の跡地に14・15世紀に建てられた伝統あるモスクとのこと。
近づくと、かなり大きい。ここのメナーレ(尖塔)はイランで一番高いらしい。
近づけば、タイルがみごとみごと。綺麗だなあ。イランのタイルって、どうしてこんなに綺麗なんだろう。色といい、模様といい、なんともいえないくらい綺麗ですねえ〜〜。
このモスク、中に入ると、地下の貯水槽に通じる階段とかもある。もともと、この場所には、ゾロアスター教の神殿があったということだから、昔からの聖地でもあるんだろう。
金曜モスクの前には、ちょっとお洒落なお土産屋さんなどがあり、野良の子猫も何匹かいたりする。逃げられたけど。逃げることないのに。


ということで、金曜モスクを見た後は、郊外にあるゾロアスター教徒の鳥葬の場、「沈黙の塔」の見学をするために、一度、街を出ることに・・・

しかし、この街、一般民家が面白い。
なので、途中の広場でバスを止めてもらって撮影タイム。


だって、ほら、見て〜〜。

何か塔みたいなのが、にょきにょき出ているでしょ。

これは風取りの塔といって、いわば天然クーラーの役割をしているもの。
夏の暑さが物凄い、砂漠の街が生み出した生活の知恵らしい。

多くの家が、この塔を持っていて、なんともいえない味のある景色になっている。
街は泥の色なんだけど、それがまた、味わい深かったりして。

ということで、撮影タイムの後は、街の郊外へ。



                                         沈黙の塔

いよいよ、「沈黙の塔」である。
名前からして、なんともいえない雰囲気を漂わせているこの塔は、ゾロアスター教徒の埋葬の場である。小高い山の上に、塔を作り、ここに遺体を運んで、鳥に食べさせる。鳥が食べやすいように、わざわざ切ったりもしていたらしい。で、右目を先に食べたら天国、左目だったら地獄・・とか、そんなこともいってたそうな。
数十年前までは、実際に、ここで鳥葬が行われていたのだけれど、ヤズドの街が大きくなって、鳥が遺体を街中までくわえて来るようになってイスラム教徒から大苦情が出るようになったので(そりゃそうだ。卒倒するよね)、使われなくなったとか。

とまあ、こんな話を聞くと、怖い〜とか、なぜ〜〜とか思いますが・・・

ゾロアスター教徒が、こんな埋葬方法をとったのは、火・水・土が神聖なものとされるため、火葬・水葬・土葬ができないから。
ちゃんと理由があるんである。

塔は男性用と女性用の二つがあり、女性用の塔は中に入って、遺体を並べた場所や鳥が食べた後の骨を落とす穴とかを見ることができる。
塔の後ろに見えるのはヤズドの街・・・。
まあ、ともかく、迫力というか、なんともいえない凄みを感じさせる場所である。
おまけに夕方・・・少しずつ空の色も変わってきて、なんともいえない雰囲気。

・・・・と、そこに響く異様な音。バイクの音である。なんと、地元の兄ちゃんがバイクでやってきて、こともあろうに、この丘をモトクロス場にしているのである。

バイクの数は、だんだん増えてくる。兄ちゃん達、観光客のギャラリーがいるんで、大張り切りである。あああ。どこの国の兄ちゃんも・・・。
まあ、兄ちゃん達、とくに、いいバイクに乗っているわけでもないし(日本人をなめてはいけない)、技術が凄いわけでもないので、無視して、塔のあたりから夕暮れを楽しむ。

だいぶ、暗くなってきたので、ホテルに戻ることに。
兄ちゃん達も、ギャラリーがお帰りなので、御帰宅である。

途中で、バスを止めてもらって、夕暮れの塔を今一度。
わたし達がバスから降りると兄ちゃん達も戻ってくるのは御愛嬌か。


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