ペルー3日目・インカ道トレッキング〜マチュピチュへの道

今日はインカ道トレッキングでマチュピチュを目指す日。
・・・わたしは最初、断ったんですけどね。病み上がりで、体力に自信ないし、普段運動不足だから、って。
でもね、でもね、添乗員さんが大丈夫だいじょうぶっ大丈夫って言ったのよ。
インカ道トレッキング、いいですよお。これやらないとマチュピチュの良さが分かんないですよお、って言ったのよ。
でね。愚かなわたしは参加してしまったのよ。ううう。
どんな地獄が待っているかも知らずに(ひとのせいにしてはいけません)。

オリャンタイタンボ駅から、ウルバンバ川に沿って走る列車でマチュピチュを目指す。
左の写真が駅。ホームなんぞ、ない。

ここからマチュピチュに向かう方法は2つ。

一般的なものは、アグアス・カリエンテスという駅で列車を降り、そこからバスで一挙に13折の道をバスで400m登ってマチュピチュ遺跡を目指すというもの。

もうひとつは、インカ道を通ってマチュピチュ遺跡を目指すというもの。
インカ道というのは、インカ時代にインカ帝国に張り巡らされた道路のことで、ここをチャスキという飛脚のような人たちが走って情報等を運んだのである。インカには馬のように人が乗れる家畜がいなかったこともあり、人がひたすら走って情報等を運んだのである。
このコースだとマチュピチュ以外の周囲の遺跡を通る。なにより、インティプンク遺跡からマチュピチュを見下ろせるというのが最大のウリである。

他にはマチュピチュに行く方法はない。車は?と思われるかもしれないけど、実はアグアス・カリエンテスまでは列車でしか行くことはできない。なんと車が通れる道路がないんである。
え。だって、そこの駅からバスでマチュピチュに行くんでは?と思わず突っ込みたくなるが、実はバスの部品をアグアス・カリエンテスの町まで運んで、現地で組み立てたんだそうで・・・。
裏を返せば、マチュピチュっていうのは、それだけとんでもない所にあるのである。そこのところをもう少し冷静に考えればよかった・・・。

インカ道トレッキングには4000m以上の峠越えもある3泊4日コースとか色々あるのだが、わたしたちが体験するのは「いちばんお手軽」なアグアス・カリエンテス駅のちょっと手前の104キロ地点からの半日コースなんである。
しかも、わたしの参加したツアーでは、列車の中で気が変われば、104キロ地点で降りずにアグアス・カリエンテス駅まで行って、さほど歩かずにマチュピチュを目指すこともできたのだ。だけど、車窓の風景に見とれて(アンデスの雪を抱いた山が見えたり、山肌にインカの遺跡が見えたりで、結構興奮)している間に、あっという間に104キロ地点についてしまい、わたしは深く考えずに降りてしまったのである。
ばかばか、わたしのばか。

ホームも何もない104キロ地点(看板だけはあった)で降り、ウルバンバ川にかかる吊り橋をわたり、受付をすますと、いよいよ、トレッキングのはじまりはじまり。
列車内で説明を受けたのだが、出発点のオリャンタイタンボ(2800mちょっと?)から、ずっと標高は下がっている。オリャンタイタンボ遺跡ではサボテンが目に付いたが、2400mくらいを境に、いつのまにか風景はジャングルっぽくなってきている。実はウルバンバ川というのはアマゾン川に続いているのだ。意外だけど事実である(地図見てね。嘘じゃないよ)。

マチュピチュは約2400m。104k地点は2100mくらいだろうか。ここから、前半、一挙に2600mくらいまで登るのである。
いま、冷静になって考えると、これって凄い大変なことだよね。でも、分からなかったんだい。きっと高山病だったのだ。

歩き始めてすぐに、小さな遺跡があり(右の写真)、風景はいいし、綺麗な花はいっぱいあるし、「うまくすれば蘭が見られますよ」などと言われて、うきうきだったのである。
そう。15分くらいはね。




が。しかし。

すぐに坂道が始まる。それも、ひたすら登り坂が。
いや、坂道というより階段が続く。
インカ道ではなく、インカ階段じゃないのっ!

ひいひいぜいぜい・・・言いながら、1時間くらいたったころだったか、昼食予定地の遺跡が見えてきた!段々畑もでかいし、結構、立派な遺跡っぽい。ウイニャワイニャというらしいが・・・あそこまでとりあえず行けばいいのねっ。

・・・と思ってからが、長い。

階段はひたすら続き・・・しかも、道は断崖絶壁。

・・・もう、心臓ばくばくである。足は既にがくがくである。

「向こうから人が来たら、絶対、山側によけて下さいね。じゃないと落ちます。落ちても拾いに行けません」」という道が続く。ひええええ。

もう嫌だ。
え〜〜〜ん。
進むも地獄。落ちても地獄なんである。
ごめんなさい。かみさま、もう悪いことしません(なに?)。もう終わりにしたいです。歩くの嫌。死ぬ。
ううん。もう死んでるかもしれない。

ぜいぜい・・・登ってるのに、なんで下りの階段があるんだよ。どうせ下ったらその分余計に登らなくちゃならないじゃないのよ。ほら、やっぱり登りの階段が・・・ううう。

階段に八つ当たりしようが何をしようが、道は果てしなく続く。ぜいぜい。ひいひい。

もう仮死状態である。意識が朦朧としたころ、滝に着く。ここからはウイニャワイニャ遺跡まで、あとちょっととのことである。はあはあ。

そして、ようやく遺跡の入り口に着く。
でも、覚えているだろうか。オリャンタイタンボの遺跡の階段が約300段あったことを・・・・。
オリャンタイタンボの遺跡ほどではなかったと思うけど(既に記憶力など機能していない)、延々と続く階段を泣きながら登ったの。
ううう。
だって、昼食は「遺跡の上」でだっていうんだもん。休もうよお、って言っても、簡単に却下されたんだもん。

で、意識不明の状態で、登りながら撮ったウイニャワイニャの遺跡の写真が右。
結構、立派な遺跡だよね。いま、写真で見ると。
どこをどう歩いたのか覚えていないんだけどね。
で、ぼろぼろになってたどり着いたところで撮った写真が下の写真。
かなり大きな段々畑である。
半分死んでる状態で聞いた説明によると、この段々畑ではコカを栽培していたのではないか、とのこと。コカは宗教行事に不可欠な植物で、ここのコカをマチュピチュに運んだのではないかと。

そうなんだ。ふうん。
でも、わたし、もう、ぼろぼろなんですけど。

ここまで疲れると、食欲もなくなるのね。
バナナ一本しか食えなかった。

で、20分程度の食事休憩のあと、すぐ近くにあるというレストハウスに移動。コーヒーが飲めます、とのことだったけど、もうコカ茶しか飲む気がしない。
ここの標高が2600ちょっと。後は、なだらかな道が続き、マチュピチュを見下ろすインティプンクの入り口に最後の難関の階段があるだけとのこと。

こういう説明を聞けば、元気な人は、もう少しで、いよいよマチュピチュが見える!と思うんでしょうね。でも、わたしにとっては「なだらかな道が続く」ということだけが、心の支えである。だけど、「最後の難関」ってなによ。
多少は回復した気力を振り絞って歩いたけど、ちょっと階段があるだけで、いよいよ、その最後の難関か、どきどき、となってしまう。心臓によくない。ただでさえ、心臓ばくばくなのに。
周囲は、もう、うっそうとした森というかジャングルみたいである。ゴムの木とか、お花屋さんで売ってそうな観葉植物のでっかいのが生えている。

そして、最後の難関の階段は、階段なんてもんじゃない。ほとんどロッククライミング。

立ち尽くすわたし。

とどめを刺されたわたし。
(あまりに呆然として、写真すら取れませんでした。はい)

しかも、この階段を登りきったらインティプンクか、マチュピチュが見えるのか、と思ったら、更に登りが続くんだもん。
もう、生ける屍。もしくはゾンビ状態。

ツアー最後尾で(いつものことさ)、たどりついたインティプンクでは、みんながざわめいている。ここから、マチュピチュが見えるはずなのだけど・・・

霧がかかっている・・・・で、その霧が劇的に晴れたのである。わあお。




・・・写真、ずれてるね。うん。そんくらい興奮したんだよ。

だって、感激である。
あのマチュピチュが、ほんとに、ほんとに・・・はるか「下方」に見える。
あとは、ひたすら「降りて行けば」マチュピチュなんである。

なあんだ。マチュピチュって、低いところにあるんじゃない。
というのは嘘です。
下の谷からは400mあります。

ただ、インティプンクがマチュピチュより高いところにあるだけ。


あ。わすれるところだった。
インティプンクというのは、「太陽の門」という意味。
マチュピチュから見て、夏至の日に太陽が昇る地点が、ここなのである。


インティプンクからは、ひたすら下り道である。

どんどん、マチュピチュが大きくなってくる。

道端には蘭の花が咲き乱れている。

右の写真みたいな蘭は、それこそいたるところに咲いている(これ花屋では高いと思う)。
他にも黄色い蘭のような花も乱れ咲いていた。
こんな花の咲き乱れる道を、膝をがくがくさせながら降りていくと、小さな遺跡(見張り場所?)があり、その先は、もうマチュピチュである。






ついにインカ道の終点 

夕暮れのマチュピチュ♪


最終バスに駆け込み、マチュピチュの麓、アグアス・カリエンテスの町のホテルへ。
かくして、わたしの長いなが〜〜い一日は終わった。
もちろん、この日、最後の作業は湿布貼りだった。うう。明日のマチュピチュは大丈夫か?

確かに、インカ道を歩かないとインカの人たちの生活空間というのは実感することはできないだろう。インカ道から見える遺跡は、大きいものは全て山の中腹・高所にある。下はジャングルだしね。高度があるほうが都合がよかったんだろうか。
それに、歩かないと、マチュピチュの周囲がジャングルだってことも分からないだろうし。

信じられないことに、このインカ道トレッキングは、いま大人気で、世界中から予約が殺到しているんである。
日頃、鍛えている人にとっては、きっと、楽しい道なんだろうな・・・と思う。花が咲き乱れていたのも事実だし。途中では、ハチドリなんかにも会えるし(写真撮ったんですけどね、それについては聞かないでください)。
わたしみたいな体力なしの根性なしでも、なんとか歩きとおせたのも(奇跡に近いが)事実だ。

でも、もう二度と歩きたくはないです。はあ。
でもでも、ばあさんになったら、写真を見せて、若いのに自慢します。はい。


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