ティカル

ティカルはグアテマラ北部、メキシコやベリーズに近いペテン州のジャングルの中にある。

ティカルとは、マヤ語で「精霊の声のするところ」という意味だとか。この名は近代になって、この遺跡が欧米人に発見されてから付けられたものだが、なんともうまい名前をつけたものである。威風堂々とした建築群からは、なにか人を超えたものの声が聞こえてきそうだ。

ティカルは紀元前200年ころから紀元後900年ころまでの長い期間にわたり栄えたマヤでも有数の都市国家であり、この遺跡の規模もマヤ遺跡としては最大級である。

ティカルの最盛期はテオティワカンが衰退した後の8世紀ころ。26代ア・カカウ王の時代。

このころのティカルの歴史は、まるで日本の戦国時代。ティカルは王子をドス・ピラスに送り、彼がドス・ピラスの王となった。しかし、彼はティカルを裏切り、敵対するカラクムルについた。そして、実兄でもあるティカル25代の王を殺した。ア・カカウはこのドス・ピラスの王を殺し、ティカルの最盛期を築いたというのである。

写真は、5号神殿から見た1号神殿(右)と2号神殿(左)。
1号神殿にはア・カカウ王が葬られ、2号神殿も彼の妻の姿が彫られたリンテルがあった。


       グラン・プラザ
ティカルの中心は、1号神殿と2号神殿のあるグラン・プラザだろう。
上の写真でも分かるかもしれないが、高さ51mの1号神殿と高さ38mの2号神殿が向き合って並んでいる。

そして、広場の両脇は、それぞれノースアクロポリスと呼ばれる建築群と、セントラルアクロポリスと呼ばれる建築群が立ち並ぶ。これだけ建築物が密集し、かつ、迫力がある遺跡は、他には知らない。
                                   1号神殿

グランプラザの華にして、ティカル遺跡の中で最も美しい建物でもあるのが、この1号神殿。

「大ジャガーの神殿」とも呼ばれるのは、この神殿上部のリンテルにジャガーがア・カカウ王を守る姿が描かれていたから。

かっては、神殿上部の飾りに漆喰でア・カカウ王が描かれていたらしい。
そして、この1号神殿の基壇には、ア・カカウ王が葬られている。
ピラミッドの台座は9段からなっているが、マヤでは9という数字は地下世界を示す数字でもある。王の葬祭ということも考えて作られたのか。

しかし、色んな説明より何より、この垂直感を強調したフォルムは時代を感じさせない素晴らしいものだ。むしろ現代的な印象すら与える。

天にそびえるような、それでいて、そばで見上げたときの重厚感・存在感もすばらしい。



ノースアクロポリスから見た1号神殿。

この角度から見た姿が一番美しい気がする。


1号神殿の裏手にあたるのが、セントラルアクロポリス。

この写真には入らなかったが、セントラルアクロポリスの更に裏手右側には5号神殿がそびえており、少し視線をそらすと5号神殿の頂上部分を望むこともできる。




      2号神殿

1号神殿と対面する2号神殿は、高さも38mと小柄であると同時に、その姿もなんとなく温和である。

この神殿は女性が仮面をつけたリンテルが発見されたことから「仮面の神殿」とも呼ばれている。
ア・カカウ王の妻に捧げられた神殿ではないかといわれるのも納得できる穏やかな姿である。

人によっては、この2号神殿をティカルで最も美しいと評するとか。




 ノース・アクロポリス

1号神殿・2号神殿のある広場の北側がノースアクロポリス。

300年ころから600年ころに建てられたという建物が重なるように建てられている。
合計100を越える建物が折り重なっているとのことだが、現在分かる建物は十数個か。それでもかなりの数であるが。

ここはティカルの聖地であったらしい。
エリート達の墓地でもあり、石碑・祭壇が並んでいる。

ノースアクロポリスの建物の中に、左のような巨大な人面像がある。
長い鼻が特徴的

雨神チャックではないかとのことだ。あまり美しい像ではないが、この像はオルメカの流れを汲むのものといわれているらしい。



 セントラルアクロポリス

中央広場を挟んで、ノースアクロポリスの反対側南側にあるのが、セントラルアクロポリス。

ここはエリートの居住区だったらしい。宮殿とも呼ばれている。

ここにも多くの建物があるが、写真の右側の建物は迎賓館言われており、左側の建物は学校もしくは病院と言われている。

1号神殿の裏手にあたる。




    3号神殿

3号神殿は、2号神殿の裏手のグランプラザから少し外れた場所にある。

わたしが訪れた2004年8月は修復中ということで詳しく見ることはできなかった。

高さは55mということなので、ティカルでは3番目に高い神殿ということになる。

この神殿は、別名を「ジャガー神官の神殿」という。
この神殿にある彫刻がジャガーをまとった神官が彫られているかららしい。
この彫刻は、いまも、この神殿に飾られているとのことだ。


この神殿のそばには、こうもりの宮殿またの名を窓の神殿と呼ばれる建物もある。





  失われた世界

「失われた世界」とは意味ありげな名前だが、実際には初期のティカル調査の際、リストからもれたことから名づけられたらしい。

ここには貴族の館とされる建物と天文台とされる建物が残っている。

写真は天文台と言われる建物。少し分かりにくいかもしれないがテオティワカン様式で作られており、ティカルとテオティワカンの関係を物語るものとされている。




 7つの神殿の広場

7つの神殿の広場は、修復がすめば、さぞ素晴らしい広場だろうと思われる。

というのも7つの神殿と、エリートの宮殿とが立ち並び、更には球戯場も3つもあるからだ。

しかし、現段階では貴族の館がかろうじて原型をとどめるのみ。
7つの神殿は小さな山、球戯場は道路にしか見えない。
写真は、貴族の館。




            4号神殿

4号神殿は高さが70mもある。メキシコのテオティワカンの太陽のピラミッドが65mであるため、スペイン到来前に建てられた新大陸の建造物のうち現存するものとしては最も高い。

とはいえ、正確には太陽のピラミッドは頂上の神殿部分が残っていれば75mほどになるそうなので、これを上回るが、太陽のピラミッドは底辺が225mというものだし、両者は建築様式が全く違うので、比較するのもどうかとは思うが・・。
ともかく、一言で言えば、とっても高い。

現在のところ、4号神殿は左のような状態で、ジャングルの上に突き出す神殿上部以外は木々に覆われている。神殿の基壇などは、全く見ることはできない。

修復されれば、かなりの威容を誇るものになると思われるが、ピラミッドの横に作られた木製の階段で登ることができ、そこからの展望が素晴らしいことから大人気のスポット。





第4神殿から見たティカルの風景。

左から1号神殿・2号神殿・3号神殿。

視線をそらせば、5号神殿も見ることができる。

この写真からわかるように、ティカルのピラミッドは1号神殿に対面する2号神殿、その裏手に3号神殿、更に、その裏手に4号神殿という位置関係にある。
樹海に浮かぶピラミッド群は壮観。



      5号神殿


5号神殿は、高さが57mあり、ティカルでは4号神殿に次ぐ番目の高さのピラミッドである。

登ることもできるが、おそらくティカルで最も登るのが怖いピラミッドだろう。4号神殿と違い階段は、ほとんど垂直だし、踊り場も狭い。

更に登ると分かるのだが、上部にはほとんどスペースがないのである。
ここに登ると、4号神殿の上部は広かったな、と思えるほど(といっても狭いが)。
なんせ、大人2人がすれ違うのがやっとのスペースしかない。

加えて修復が進んでいるため、真下が見下ろせるので、恐怖感も大きい。

それでも登りたがる人が多いのは、ここからは4号神殿と違い、グランプラザを横から眺めることができるため。


最初に載せた写真が5号神殿から見たグランプラザ。
1号神殿と2号神殿の対面する姿である。

ここでは、1号神殿の横顔をUPしてみた。


4号神殿からの眺めと5号神殿からの眺めのどちらがいいかと言われると、位置関係が違うのでどちらがいいと言うのは難しい。
やはりティカルに行ったら両方登るべきだろう。

怖い思いをして5号神殿に登る価値があるかと聞かれれば、それはある。4号神殿より近い場所から、しかも、1号神殿・2号神殿をはじめとするグランプラザの全景を見下ろすことになるのだから。

しかし、登るのは自己責任で行ってもらうしかないけれど。
高所恐怖症の人が無理をすると、おそらく・・・・大変なことになる。実際、階段の途中でフリーズしてしまった人も見たし・・・。
少なくとも、誰かが助けに来てくれるとは思わないほうがいい。



ちなみに・・・5号神殿からグランプラザがよく見えるように、グランプラザからも5号神殿がよく見える。


ノースアクロポリスからは1号神殿の右手に5号神殿がジャングルからのぞいている姿を写すことができるし、セントラルアクロポリスからは近いこともあって、かなり大きな5号神殿の姿を見ることができる。

この写真はセントラルアクロポリスから見た5号神殿。












                                        6号神殿

6号神殿は、ア・カカウ王の息子である27代が建てた神殿。

この6号神殿は、ティカルの遺跡公園の中でも、ひとつぽつんと離れたところにある。

高さも12mとジャングルの中に埋もれてしまうほどの小さな神殿。

この神殿は上部の飾り屋根に神聖文字が刻まれていることから碑銘の神殿とも呼ばれている。


見学コースからは外れてしまうからか、あまり観光客もいない。また、この神殿の周囲には猿が好きな果実が多いらしい。
そのせいか、この6号神殿はティカル国立公園の中でも、猿を観察するのに適したポイントらしい。
ホエザルの声が薄暗いジャングルの中に響き、なかなか、怖い。

  


   コンプレッホ      

コンプレッホというのは、双子のピラミッドと呼ばれる2つのピラミッドと祭祀を行っただろう2つの建物とがセットになっている建築群。

写真はピラミッド。このピラミッドは四方に階段がある。
このピラミッドの前に石碑が9つ置かれいる。
9がマヤで地下世界を表す数字であることから、死者に対する祭事が行われたのではないかともいわれている。

実際には双子のピラミッドといっても1つしか修復されていないし、全く修復作業に手を付けられていないものが多い。



ティカルは凄い。朝9時半から夕方5時近くまでかかって、やっと主だったものを見られたというくらい見所は多い。それに遺跡をめぐるのに精一杯で、残念ながら博物館まで見る時間はなかった。現在訪れることができるマヤの遺跡としては、やはり最高峰だろう。
現在修復されているものを回るだけで、これだけ時間がかかるのだから、ジャングルに埋もれている数多くの未修復の建造物が修復されたら、いったいどうなるのだろうか。

それに、遺跡だけではなく、広い公園ではホエザルやアライグマの仲間のハナグマの姿をしばしば見かけるし、人の手のひらほどの大きな羽の蝶が飛んでいたり、足元にはハキリアリが行列を作っていたりと自然が素晴らしい。

それにしても往時のマヤ文明は凄い。このティカルは、あくまでも「最大級」の遺跡であって、ティカルに匹敵・上回る規模の都市遺跡があるというのだから。早くそれらの遺跡の修復が進むといいのだけれど。

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