プランバナン

プランバナンというのは、ジョグジャカルタの東、車で30分ほどのところにある村の名前で、ここには8世紀から10世紀に建てられた多くのヒンズー・仏教寺院が残っている。
プランバナンは世界遺産となっているが、プランバナンという名の寺院があるわけではなく、プランバナン遺跡群というのが正確なようだ。

8世紀から9世紀といえば、ジョグジャカルタの北西にボロブドゥールが建造された時代である。このころ、ジョグジャカルタ周辺には仏教国であるシャイレーンドラ王朝と、ヒンズー教国であるサンジャヤ王朝支配下のマタラム朝とがあり、二つの王朝がそれぞれの信仰する宗教寺院を築いていたわけだ。

世界遺産となっている史跡公園内に、ヒンズーの巨大寺院ロロ・ジョグランを始めとする幾つもの寺院があり、更に、その周辺にも多くの素晴らしい寺院が点在している。
素晴らしい寺院があまりに多いので、ここではロロ・ジョグランだけに絞って、他の遺跡群は後編にまとめてみました。そちらに興味のあるかたは、後編にどうぞ。


ロロ・ジョグラン

プランバナン遺跡群の白眉は、やはりなんといってもロロ・ジョグランだろう。
ロロ・ジョグランはマタラム朝によって、850年ころから900年ころにかけて建造されたヒンズー寺院で、同時に王家の霊廟でもある。マタラム王朝6代目のラカイ・ピカタン王が建造し、また、彼の霊廟となったらしい。

史跡公園に入ると、最初は巨大な3つの寺院・塔かと思える。

しかし、そばに近づくにつれ、実は巨大な3つの寺院と、その前に立つやや小ぶりな3つの寺院を中心とする建造物群だ、ということが分かってくる。

左の写真だと、5つの建造物にしか見えないかもしれないが、実は、真ん中の巨大な建造物の前に、やや小ぶりな建造物が建っている。

中央のシヴァ聖堂が巨大で、その前の堂が重なってしまい、分かりにくいかもしれないが・・・。


ロロ・ジョグランには、高さ47mのシヴァ聖堂を中心に左右に高さ23mのヴィシュヌ聖堂、ブラフマー聖堂が並び、更に、3つの聖堂の前には、それぞれの神の乗り物であるナンディ、ガルーダ、ハンサを祀る堂が置かれている。

そして、この6つの堂をとりまくように、かっては224の祠堂が建っていたのだとか・・・。



ボロブドゥールが大地に根を下ろしたような安定感のある建造物であるのに対し、ここプランバナンでは幾つもの聖堂が天に向かって聳え立ち、なんともいえないリズム感を感じる。
地球の歩き方では「天に燃え盛る焔」と評していたけれど、上手い表現だ。


聖堂は基本的に全て3つの部分からなっている。すなわち、下から基壇・堂・尖塔(屋根)である。

東に面した階段を登りつめると堂に入る入口があり、内部に神が祀ってあるのだが、シヴァ聖堂では中心のシヴァ神を祀る部屋だけでなく、ドゥルガー(シヴァ神の妻)、ガネーシャ(シヴァの息子)、アガスティヤ(聖仙の長)を祀る小部屋もある。

シヴァ神を祀る部屋に向かう階段を途中で折れると基壇の上に設けられた回廊に出る。その回廊を通るとドゥルガー等を祀る小部屋を巡ることができる仕組み。

左の写真で人が登っているのが写っていると思うが、ちょうど、人の姿が隠れるあたりから回廊に出る。主神であるシヴァ神を祀る堂に入るには、更に、まっすぐ階段を登らないといけない。

ちなみに小部屋があるのはシヴァ聖堂のみで、他の聖堂は回廊はあるが小部屋はない。





ロロ・ジョグランのシヴァ聖堂の回廊にはラーマーヤナのレリーフが彫られている。正確にはシヴァ聖堂の回廊だけでは足りなくて、ブラフマー聖堂の回廊に物語りは続いている。

ラーマーヤナはラーマ王子が悪魔王に連れ去られた妻シータを弟やハヌーマンの助けをかりて救い出すインドの有名な物語だが、インドネシアでは非常に好まれたらしい。

確かに、レリーフの中のラーマ王子は大活躍である。ここのレリーフの方が、ボロブドゥールのレリーフより自由な表現が多い気がする。動物達もたくさん出てきて、愛らしい。悪者も分かりやすいし(お腹に顔がある)。




しかし、回廊には他にローカパーラという方位を守る神がいて、これが素晴らしい。ヒンズーの神で東西南北をそれぞれ守っているというのだが、理屈抜きで、丸彫りに近い神々の姿は惚れ惚れする。




このシヴァ聖堂はシヴァ神を祀ると同時に、シヴァ神像の下にはラカイ・ピカタン王の遺骨が埋められている。この寺院は王家の霊廟という意味もあることから、このシヴァ神も王の面影があるのでは・・とも言われている。

しかし、ロロ・ジョグランではシヴァの妻であるドゥルガー像の方が有名になっている。「ロロ・ジョグラン」というのは、「細身の乙女」という意味で、現地ガイドさんがこの地の伝説を語ってくれる。

それによると、ロロ・ジョグランは、この地の王の娘だったが、父が戦いに破れたため、敵王の妻にされることになってしまった。
これを嫌ったロロ・ジョグランは一晩で1000の寺院を作れたら嫁ぐ、と苦し紛れの約束をしたが、なんと敵王は999の寺院を作ってしまい、朝までに1000の寺院を作る勢いだった。
そこで、ロロ・ジョグランが鶏を鳴かせて敵に朝が来たと勘違いをさせたのだが、敵王は1000の寺院が作れなかった理由がロロ・ジョグランにあると知るとロロ・ジョグランを石の像に変えてしまった。この像が石に変えられてしまったロロ・ジョグランなのだ、と。

現地ガイドさんの話だと、現在のインドネシア人はほとんどがイスラム教徒なのでヒンズーの神々には興味がないのだが、このドゥルガー像はロロ・ジョグランだということで、その美しさにあやかろうと参拝して触るのだそうな。
実際、この像は多くの人に触られたからか黒光りしている。
ロロ・ジョグランの伝説は、かってこの地にあって滅ぼされた王家の伝説なんだろう。もし、その王家がこの寺院を築いたマタラム朝によって滅ぼされた王家だとしたら、ちょっと皮肉な気もする。




シヴァ聖堂以外のヴィシュヌ聖堂・ブラフマー聖堂にも、それぞれヴィシュヌとブラフマーの像が飾られていて像は見事だ。
シヴァ・ヴィシュヌ・ブラフマーの乗り物の堂には、現在はシヴァの乗り物のナンディ(聖牛)のみが置かれている。それにしても、神の前に乗り物の堂を建てるというのも面白い。

ロロ・ジョグランの聖堂は、その外壁も美しく飾られている。
左下は堂の外壁部分。多くの神々が飾っている。
右下は基壇部分のレリーフ。獅子を挟んで天樹と半人半鳥のキンナラのレリーフ。




わたしのツアーでは、ロロ・ジョグランは約2時間ほどの観光だったが、もし時間があれば、あと1時間くらいゆっくりしたいところだ。
まあ、わたしが行った日は、凄い暑さだったので、もう少し長くいたら熱中症になったかもしれないが。

ボロブドゥールとプランバナン(ロロ・ジョグラン)のどっちが素敵?と聞かれると、正直、悩む。

建築様式も違いすぎるし、比べること自体に無理がある気もする。
レリーフに限定すれば、量的には、圧倒的にボロブドゥールの方が凄い。
でも、一つ一つのレリーフとして考えると、プランバナンの方が表現が自由で、しかも穏やかで愛らしい気がする。
わたしのインドネシア・マイ・ベストは僅差でここのローカパーラだ(ボロブドゥールの飛天も捨てがたいんだが)。

いずれにせよ、プランバナンは、もっと日本でも有名になっていい気がする。





更に、この後回った遺跡群も面白かったです!
興味のある方はどうぞ〜
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旅日記インドネシア1日目(プランバナン)を見る
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