トゥルム


トゥルム遺跡の「トゥルム」とは「城壁」の意味。しかし、もともとは「日の昇る街」・「東端の街」と呼ばれていたらしい。ユカタン半島のカリブ海に面したこの遺跡は、確かに、マヤの東端ともいえる。
この遺跡はマヤが最盛期を過ぎ、メキシコ高原のアステカ帝国が隆盛を誇っていた時代・スペイン到来時にも栄えていたマヤの遺跡である。メキシコ高原(アステカ)とユカタン(マヤ)の海上貿易の拠点として栄えていたらしい。その意味で、この都市遺跡は商人の街でもあった。
遺跡は海に面する以外の三方を全て壁で囲まれている。これが「城塞」といわれる所以だろうが、入口は全て小さく、また、見張り台も用意され、かなり防御を考えたつくりとなっている。入り江も、いざというときには海に逃げるために用いられたとか。当時のマヤの社会が抗争の絶えない時代だったことをうかがわせる。

ここはスペイン人が最初に目にしたマヤの都市でもある。スペインのセゴビアにも劣らないと彼らが称した都市は、いまはその面影もないけれど、海の素晴らしさとあいまって、魅力ある遺跡ではある。リゾートの観光客であふれていることも確かだが。


                                         エル・カスティージョ

トゥルム遺跡の中心的な存在なのが、エル・カスティージョと呼ばれる区域。

トゥルム遺跡自体が周囲を海と城壁で囲まれているのだが、ここは遺跡の中でも周囲を壁で囲まれ、特別の存在だったらしい。ちなみに後ろはカリブ海を見下ろす断崖となっている。

いわば、トゥルムの聖域だったと思われる場所である。

いくつもの神殿からなり、最も大きいのがククルカンの神殿。隣接する左側の小ぶりな神殿が「降臨する神」の神殿と呼ばれるもの。


エル・カスティージョのククルカンの神殿。
今は階段が登れないのだが、階段を登ったところの入口の柱が蛇になっている。

羽毛のある蛇・ククルカンと思われ、トルテカの影響らしい。

トルテカの影響といえばチチェン・イツァだが10世紀ころに影響を受けたことは有名だが、トゥルムは更に遅れた13〜15世紀の建物が多い。
いずれにせよ、この建造物はトゥルムで最も高い建造物であり、街の中心となっていたことは明白である。

それだけでなく、この建物は灯台の役割もしていたらしい。

左はエル・カスティージョを横から見たところ。
カリブ海を見下ろす断崖に海を背にして建っているのがわかるだろうか。
確かに、断崖・高台の上に建つ白亜の神殿は、海からのいい目印であったろう。


ちなみに海は東側なので、それを背にする神殿を拝むことは、東を向くことになる。
マヤの人達は東の日の出を拝んだりしたのだろうか。



                                         降臨する神の神殿
エル・カスティージョの左隣・北側にある小さな神殿が「降臨する神の神殿」

上部の方が大きく、下部が小さくなっているのはトゥルム建築の特徴。

名前の由来は、神殿の入口の上にあるレリーフ。

逆立ちをしたような不思議な姿勢の人物が描かれていて、それが「降臨する神」とか「天下る天使」とか呼ばれているのである。

このレリーフはマヤの他の遺跡でも見ることはできるが、トゥルムのレリーフは特に有名。

とはいえ、「降臨する神」の姿というのはわかりにくい。

顔をこちらに向け、足を大きく開いて逆立ちをしているような人物が彫られているのだが、分かるだろうか。

かなり奇妙な姿である。

この姿については、天からとうもろこしと知恵を運んできてくれた神をあらわしているとも、また、おしりの部分から蜂の姿を描いているともいわれている。
蜂蜜はマヤの重要な産物だったらしい。



                                         フレスコ画の神殿

左はフレスコ画の神殿

この2階建ての神殿は、内部にマヤの神々が描かれたフレスコ画が残っていることで有名なのだが、残念ながら、縄が張ってあり、内部に入ることはできない。

覗いてみると、確かに、何かが描かれていることはわかるのだが。
本来は、トゥルム細大の見どころといわれるだけに残念。
とはいえ、この神殿には降臨する神のレリーフや生死を意味する人物の顔のレリーフも残っており、それだけでも興味深いのだが。



                                         風の神殿

トゥルム遺跡北側の海に突き出したところに風の神殿が建っている。

この神殿は基部が円形になっており、それが風の神殿の特徴なのだそうだ。

トゥルム遺跡で海と遺跡の両方を写すなら、この神殿が一番だろう。
ちなみに、この神殿の裏手は入り江となっていて、白い砂浜が見事である。
そちらから撮っても、海と神殿が美しい。





トゥルム遺跡には、他にも、宮殿だったと言われる建物や、セノーテの家など見どころは多い。

セノーテというのはユカタン半島にみられる泉のこと。
ユカタン半島は石灰質の地盤のため、川がなく、かわりに地下に水が溜まって泉ができる。
地上部分が落下して泉になることもあれば、地下水として利用される場合もある。

トゥルムでは地下に泉があり、その上に建物が建てられている。水は重要なだけに、大事に管理されていたのだろう。


トゥルムの海を眺めていると、色が濃い場所があるのに気がついた。
なにかと思って聞いたところ、そこも、実は地下水がわいている場所なのだそうだ。
何箇所もあることからすると、かなり地下水が多い場所なのだろう。


それにしても美しい海である。

他にも海に面したマヤ遺跡はあるらしいが、整備された遺跡としては、ここがほとんど唯一の場所だろう。海のあるマヤ遺跡は、すてき、である。
                                         
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